(1)人事考課は人物評価とは違います。人が人としての値打ちを評価するのではなく、その人の職務行動を通じて現れた具体的な職業能力、言い換えれば企業が必要とする能力に限定して評価するのが人事考課です。決して、人事考課によって人間の優劣が決まるものではありません。人事考課を考えるに当っては、まずこの点の理解が必要です。
(2)人事考課を行う主たる目的は、能力開発と公正処遇の2つです。ところが、公正処遇については関心が高い企業は多いのですが、人事考課を能力開発に効果的に活用している企業は多くありません。しかし、この両者はお互いに結び付いてこそ真価を発揮します。企業にとって能力開発されない社員の評価と処遇を繰り返しても、社員に格差を付けることはできても、企業の発展や強化には何らつながりません。そこで、能力開発と連結した育成型人事考課制度が重要になります。
(3)育成型人事考課は、事実主義に基づいて社員の日々の具体的な行動や結果を観察し、その事実は本人の意欲に原因があるのか、あるいは能力や知識に原因があるのかを診断(要素分析)する評価領域と、その診断結果を活用するために必要な能力開発領域と公正処遇領域の3領域で構成されます。職能資格制度との関係は上図のようになります。